研究分担者 |
川島 博之 東京大学, 大学院・農学生命科学研究所, 助教授 (30161318)
小見山 章 岐阜大学, 農学部, 教授 (60135184)
秋山 侃 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 教授 (10283318)
鞠子 茂 筑波大学, 生物化学系, 助教授 (10251018)
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研究概要 |
平成14年度は以下の点を明らかにした。 1.岐阜県飛騨地方の冷温帯にある110年生の落葉広葉樹林において、1983年から2002年まで毎木調査を繰り返した。樹木の生死の調査と胸高直径の測定により、1.06haの調査地で森林の現存量と成長量を求めた。この森林の現存量は時間とともに増加しており、19年間で121.2td.w.ha-^1から163.7td.w.ha-^1に変化していた。また、リタートラツプを設置して2000年から2002年までの3年間にわたり枯死量と被食量の測定を行なった。3年間の平均で、この森林の純生産量は6.89td.w.ha^<-1>yr^<-1>と推定された。ただし、成長量には顕著な年次変動が生じており、渇水や異常気象の影響で、それが激減する年があることがわかた。また、低温の影響や早雪により、開葉時期に関係する特定の生質を持つ樹種群の成長量が低下していた。このような異常気象がきっかけとなって森林の樹種構成が変化していることが明らかになった。 2.微気象学的手法である渦相関法を用いて,日本の代表的な草原であるススキ草原の炭素収支を推定した。CO2フラックスは,光や温度などの物理的環境要因の影響を受けて日変化を示した。日中には、植物の光合成により,CO2フラックスは負の値(草原へのCO2の吸収)を示し、正午前後にCO2の取り込み速度は最大(7月;-3.6gCO2m^<-2>hr^<-1>)となった.一方,夜間には植物体や土壌からの呼吸により,正の値(大気へのCO2の放出)を示した(7月;+2.4gCO2m^<-2>hr^<-1>).また.植物体の生育に伴いCO2フラックスは大きく季節変化を示した.生育初期(4月下旬)においては,一日当たり2.7〜14.2gCO2m^<-2>day^<-1>の放出であったのに対し,夏期(7〜8月)には6.2〜11.7gCO2m^<-2>day^<-1>の吸収が認められた.CO2フラックスと環境要因の関係に基づいて、各月ごとの炭素収支を推定した.その結果.本草原は5月以降放出から吸収に転じ.7月にはCO2吸収量が最大(-102.7gCm^<-2>month^<-1>)となった.生育期間を通しての炭素収支の値は-203.4gCm^<-2>7months^<-1>と見積もられ,炭素の吸収源であることが示唆された.
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