大気圧中におけるイオン誘発核生成の基礎データを得るためにNH_3、SO_2、H_2O混合ガスに放射線を照射して生成する正・負イオンの移動度スペクトルおよび質量スペクトルをイオン移動度/質量分析装置を用いて測定した。また同時に生成した粒子の粒径分布をクラスターDMAを用いて測定した。SO_2/H_2O混合ガスの場合、H_2Oが少ない条件下においてはSO_2が直接イオン化されることによりSO_2^-、SO_3^-、SO_44^-、SO_5^-、などのイオンが多く生成し、同時に生成した微粒子の帯電率が高いことからSO_2^-、SO_3^-、SO_4^-、SO_5^-などを核とするイオン誘発核生成が主要な粒子生成機構であることがわかった。一方H_2Oが多くなるとH_2Oが関与するイオン-分子反応によってOHラジカルが大量に生成し、それによりSO_2は酸化されてH_2SO_4に変化することが判明した。この場合生成した微粒子の帯電率は低下し、H_2SO_4とH_2Oとの均質核生成の割合が高くなることが示された。これらの実験結果から、大気の電離による微粒子の生成機構は含まれている水蒸気量に依存して大きく変化する可能性があることが明らかとなった。また、NH_3を加えるとH_2SO_4の減少が観測された。これはNH_3がSO_3やH_2SO_4と反応してNH_3・SO_3や(NH_4)_2・SO_4が生成した結果H_2SO_4が減少したものと考えられる。この場合粒子の生成は増えるが帯電した粒子の割合はさらに減少し、均質核生成が有利に進行することが示された。 今後NH_3、SO_2以外に新たに有機成分を加え、有機エアロゾル生成過程についての実験を進める予定である。
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