昨年度までの研究において、ヒト・マウス融合細胞を用いた実験から、オメプラゾール感受性遺伝子(POS)が、ヒト染色体10番に乗っていることが明らかとなった。そこで、さらにその遺伝子座がどの辺りに位置しているかを決めるために、放射線を照射したヒトHepG2細胞と、マウスHapa-1細胞を融合させるラジエーションハイブリッド法を行い、一つのクローンを得た。このラジエーションハイブリッド細胞と、ヒト・マウス融合細胞から抽出したDNAを蛍光色素で標識し、ヒト正常末梢リンパ球細胞をM期に停止させた塗沫標本にハイブリダイズさせる、いわゆるRsverse FISH(Reverse Fluorescence in situ hybridization)法により、共通に保持されている染色体部位を検索した。この結果、染色体10番の短腕10p13および10p11.2の可能性が示された。 この領域に存在している遺伝子は、サンガーセンターの遺伝子データベースでは、10p11.12では11遺伝子が存在し、10p13領域では15遺伝子があることになっている。この中で、HepG2細胞、ラディエーションハイブリッド細胞、ヒト肝臓で発現している遺伝子を拾い出すと、10P11.12では6遺伝子、10P13では8遺伝子に絞られてきている。現在、オメプラゾール感受性遺伝子の性質から考えて、可能性の高い遺伝子からクローニングを行い、発現ベクターに組み込んで、マウスHepa-1細胞にCYP1A1遺伝子のレポーター遺伝子ベクラーとトランスフェクトし、オメプラゾールによって誘導発現する遺伝子の同定を行っている。
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