Ahレセプターのリガンドとはならないベンズイミダゾール構造を持つオメプラゾール(OP)が、CYP1A1を誘導発現させる機構を明らかにすることを目的とした研究である。ベンズイミダゾール化合物によるCYP1A1の誘導は、ヒトHepG2細胞では起こるが、マウスHepa-1細胞では起こらないという現象を利用して、マウスHepa-1細胞とヒトHepG2細胞との融合細胞を作製することによりヒト遺伝子座の同定を行った。ヒト-マウス融合細胞の中から、OPによってCYP1A1の誘導がかかる細胞、即ちヒト型の表現型を示す細胞を単離することができた。このことは、リガンド非依存性のAhレセプターの活性化に関与するヒト遺伝子はマウス細胞の中でも優性に働くことを示している。ヒト型融合細胞に保持されているヒト染色体DNAを、Reverse FISH法により同定することができるが、この方法により染色体10番の短腕が共通に保持されていることが明らかとなった。さらに、このヒト型融合細胞を長期間培養すると、OPによる誘導性は消失していったが、この変化と共にヒト染色体10番が失われていくことが明らかになり、OPS(omeprazole sensitivity)遺伝子がヒト染色体10番短腕に存在すると結論付けられた。ラディエーションハイブリッド法により作られた融合細胞を用いたReverse FISH法により、さらに詳細な部位10p13にOPSがあると推定された。
|