研究概要 |
以下に平成12年度の課題とその成果について記す。 (1)紫外線抵抗性品種および感受性品種のCPD光修復酵素遺伝子のクローニングと遺伝子産物の精製 ます、農林1号の光回復酵素活性低下の要因が細胞内の酵素量の低下によるのか、光修復酵素遺伝子の構造的変異によるのかについて、シングルフラッシュ法により解析した。その結果、農林1号の光修復酵素は、抵抗性品種ササニシキと比較してCPDと結合し難く、温度安定性も低いことから、遺伝子が構造的に変異していることが強く示唆された(Hidema et al.Plant Cell,2000)。この結果を遺伝子レベルで確認するため、ササニシキからCPD光修復酵素をコードする遺伝子のクローニングに成功し、現在その遺伝子産物の精製を行っている。さらに、感受性品種農林1号からの遺伝子のクローニングを行い、その一部は既に明らかにしている。 (2)CPD光修復酵素発現の光調節反応機構の解析 光回復酵素の活性は、red,blueの光で誘導され、far-redでその活性誘導がキャンセルされることがわかった。さらに、cDNAをプローブに、ノーザン解析を行ったところ、遺伝子発現も同様の結果が得られた。したがって、光回復酵素遺伝子は、ファイトクロームによって光調節されていることがわかった(投稿準備中)。 (3)紫外線吸収物質と紫外線感受性について UV吸収物質の一つであるアントシアンの蓄積を促進する遺伝子座を導入し、親株よりアントシアンを多く蓄積するイネ系統(準同質遺伝子型系統)を材料に、紫外線感受性試験を行った。その結果、これまで紫外線抵抗性の主要因子であると考えられていたアントシアンを多く蓄積するイネは、親株と比較してUVBによる生育阻害効果が大きく、紫外線抵抗性が一概にUVB吸収物質の蓄積のみでは説明できないことを示した(Maekawa et al.Breeding Sci.2001)。さらに、アントシアン集積イネ品種は、UVB誘導CPDを修復する光修復能力が低いことがわかった。
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