1.多数のDNA修復経路の変異細胞株を樹立した。具体的には、Rad51ファミリー5種類の変異細胞株、Rad51ファミリーの一つXrcc3とRad52との二重変異株、DNA- PK/KU70二重変異株、DNA- PK/Rad54二重変異株、Rad18変異株、Rad18/Rad54二重変異株などである。 2.DT40変異細胞でのLOHのアッセイを確立するため、HPRTのヘテロ変異細胞を樹立した。6TG選択下に、ヘテロ細胞のコロニー形成を行い、LOHの出現頻度を調べようとした。確かに有る頻度でコロニーが出現するが、このコロニーはそれ以上成長せず明らかに異常であり、これらのコロニー細胞がLOHを起こしているかどうか調べることが不可能であった。核酸代謝の種特異的、あるいは細胞特異的な問題によってこういった結果となったと考えている。現在APRTを使用することを計画し、そのクローニングの準備中である。 3.遺伝研深川博士らはDT40において使用できる染色体ペインティングプローブを開発した。かれらと共同でDT40変異細胞における染色体をペインティングによって検索する方法を確立した。今後各変異細胞でペインティングによる染色体数や転座などの検索を行う。 4.Jasinらによって開発された人工組みかえ基質を挿入したDT40を作成した。この細胞にI-Sce lを発現させ、相同組換えと非相同末端結合の出現頻度を測定することが可能となった、この系を応用してKu70欠損におけるDNA組換え活性を測定する事が出来た。今後リアルタイムで修復をモニターすることを目的として、I-Sce IをTAT配列と融合させた人工蛋白として細胞外から導入することを検討中である。実際TAT配列をつけたGFP蛋白は非常に効率よくDT40に導入可能であった(未発表データ)。
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