研究概要 |
コラーゲンは一般のプロテアーゼでは分解されにくく、その分解にはコラーゲンに特異性の高い特殊なプロテアーゼ(コラゲナーゼ)を必要とする。コラゲナーゼは一般に亜鉛依存性で熱に不安定なため、高温酸性条件下で進行するコンポスト化を支援する触媒としては不適当であった。そこでコンポスト化の高温環境下で長期間にわたって十分な活性を保ちうる耐熱性コラゲナーゼを自然界から幅広く探索した。その結果、コラーゲン分解活性の高い耐熱性プロテアーゼを生産する好熱性細菌NTAP-1株を得た.この菌は運動性を有し,芽胞を形成する好熱好気性桿菌であった。生化学的な特徴はBacillus属細菌とよく合致し、至適生育温度が60〜70℃、至適生育pHが4〜5という好熱好酸性の菌であった。この菌の培養液上清から、各種のカラムクロマトグラフィーにより分子量約46kDaの単量体の耐熱性コラーゲン分解酵素を均一状態に精製した.この酵素は、コラーゲンやゼラチン(コラーゲンの熱変性物)に高い特異性を示し、また反応の至適pHは酸性領域(pH3.9)にあった。亜鉛依存性のコラゲナーゼの反応最適pHは7-9にあり、また本酵素がEDTAなどのキレート剤で阻害されないことを考慮すると、本酵素はコラーゲンに高い特異性をもつ酸性プロテアーゼの一種であると考えられた。しかしながら本酵素は、酸性プロテアーゼの特異的阻害剤であるペプスタチンやジアゾアセチル-DL-ノルロイシンメチルエステルによって阻害されなかった。最近これらの阻害剤の影響を受けない酸性プロテアーゼの一群、ペプスタチン非感受性プロテアーゼが報告されており、本酵素もこのグループに属するものと推測している。本酵素は高い耐熱性をもち、市販されているコラゲナーゼはどれも熱に不安定であるのに対して、本酵素は60℃,pH4.0で4時間の熱処理後も80%の残存活性を保持していた。
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