研究概要 |
新規な耐熱性コラーゲン分解酵素の生産菌の分類学的位置づけを明らかにし,本菌が,Alicyclobacillus属の新種であるものと結論した. この耐熱性コラーゲン分解酵素の部分アミノ酸配列を決定し,この配列情報をもとに本菌のゲノムDNAから本酵素遺伝子の一部をPCRで増幅し,コロニーハイブリダイゼーションによって目的遺伝子を単離した.本酵素の推定アミノ酸配列は,近年報告されている数種のペプスタチン非感受性酸性プロテアーゼのアミノ酸配列と相同性を示した.これらの酵素は,昨年新しいタイプのセリンプロテアーゼであることが明らかにされたものであり,通常のセリンプロテアーゼが形成する触媒トライアード(His,Asp,Ser)とは異なり、これに対応する位置にGlu,Asp,Serが存在している.触媒残基と推定されるアミノ酸残基周辺の配列EXXLDならびにGTSは,本コラーゲン分解酵素についても保存されていた.よって本酵素もこれらと同様のファミリーに属すると考えられる. 本酵素はコラーゲンに対して高い特異性を示し,本酵素処理によるコラーゲンの分解生成物は低分子のペプチド断片であった.また,生成した数種のペプチド断片のアミノ酸配列を解析した結果,N末端(P1'位)は全てGlyであることが分かった.これは本酵素が,コラーゲン分子に多数出現する特有の繰り返し配列(Gly-Xaa-Yaa)を認識することを示唆しているが,代表的なコラーゲン分解酵素の合成基質であるSuc-GPLGP-MCAは分解しない.そこで得られた数種の分解ペプチドのアミノ酸配列からコラーゲンの切断部位を特定し,その周辺のアミノ酸配列を基に合成ペプチドを作製して,本酵素を作用させた.現在までに2種のペプチド,FGPA-GPIG,DGVR-GLYGについて切断することを確認した(-部分で切断).
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