研究課題/領域番号 |
12480162
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡邊 隆司 京都大学, 木質科学研究所, 助教授 (80201200)
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研究分担者 |
本田 与一 京都大学, 木質科学研究所, 助手 (70252517)
桑原 正章 京都大学, 木質科学研究所, 教授 (40035978)
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キーワード | 木材腐朽菌 / リグニン / ゴム / バイオレメディエーション / バイオマス |
研究概要 |
本研究では、酵素から離れた場所でリグニンを選択的に分解する特異な白色腐朽菌のリグニン分解機構によるポリイソプレン系ゴムの分解メカニズムを解明し、その機構を応用したリグニンおよび難分解性環境汚染物質の強力な分解系を開発することを目的とした。はじめに、加硫した天然ゴムシートを加えたゴム培地を含むブナ培地で白色腐朽菌Ceriporiopsis subvermisporaとDichomitus squalensを200日間に渡って培養した結果、C.subvermisporaでは培養開始後1ヶ月ほどから著しい菌糸成長とゴムの重量減少が認められた。ゴムの分解は、SEMによる表面観察においても確認された。これに対し、同じリグニン分解酵素MnPとLacの生産菌であるD.squalensにおいては、ゴムの分解は認められなかった。ゴム添加培養系において菌糸成長の促進が認められたことから、ゴム添加とリグニン分解の関係を次に分析した。リグニン分解を定量化するため、^<14>C-ラベルしたリグニン前駆体をポプラに投与し、リグニンを放射線ラベル化したポプラ材を調製した。このポプラ材を含む木粉培地にゴムを添加し、C.subvermisporaを培養し、リグニンの無機化で発生する^<14>CO_2を定量した。その結果、培養系にゴムを添加するとリグニンの無機化量が1.5倍程度に増加することを見出した。この結果は、ゴムの添加によってC.subvermisporaによるリグニンの分解が促進されたことを示す。同様な効果は、合成ゴムNBRでも認められた。この他のゴム、BR、IR、IIR、SBR、CRなどではゴム添加の効果は微弱であった。次に、C.subvermisporaのゴム分解機構を解析するため、C.subvermisporaの木粉培養物からMnPを分離精製した。精製したMnPとポリイソプレンを反応させたが、分解は起きなかった。これに対し、C.subvermisporaの代謝物である不飽和脂肪酸であるリノール酸をMnPとポリイソプレンに添加した系では、ポリイソプレンの低分子化が起こった。この結果は、MnPによる脂質過酸化がポリイソプレンの分解に関与しうることを示している。
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