トリテルペン骨格は天然には80種以上知られているが、中でもオレアナン、ウルサン、ルパン骨格が植物界に広く分布してる。これらの骨格はオキシドスクアレンを基質として形成され、その反応を司るオキシドスクアレン閉環酵素は、天然有機化合物の多様性の起源を探るうえで、極めて興味深い酵素である。これまで報告されているトリテルペン合成酵素は薬用ニンジン毛状根からのβ-アミリン合成酵素、及び、シロイヌナズナからのルペオール合成酵素の2種のみであり、構造に関する情報量は必ずしも十分とはいえない。反応機構の解析を基盤とした新機能酵素の構築を行うためには、他の骨格を生成物として与える複数個のトリテルペン合成酵素のクローニングが不可欠である。そこで本年度はエンドウ、カンゾウ、カボチャ、ヘチマ、シラカンバ、オリーブ、西洋タンポポ、グレープフルーツなどを材料とし、他の骨格を形成するトリテルペン合成酵素のクローニングを行なった。エンドウ種子よりα-アミリン及びβ-アミリンを生成物として与える複合アミリン合成酵素を、カンゾウ培養細胞より、β-アミリン合成酵素、ルペオール合成酵素を、カボチャ芽生えよりククルビタン合成酵素を、ヘチマ培養細胞よりイソマルチフレノール合成酵素を、シラカンバ培養細胞より、ルペオール合成酵素とβ-アミリン合成酵素を、西洋タンポポよりルペオール合成酵素を得た。得られた一次構造を基にトリテルペン合成酵素の分子進化を解析い、トリテルペン合成酵素の分子進化と反応機構との間に密接な関係があることを明らかにした。
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