オタネニンジンからβ-アミリン合成酵素のクローニングの際に用いたプライマーを用い、他の骨格を形成するトリテルペン合成酵素のクローニングを試みた。9種のトリテルペン生産植物より、PCRによるクローニングを行った。一つの植物あたり36個のクローンを拾い塩基配列を決定し、トリテルペン合成酵素と推測されるものを選択した。トリテルペン合成酵素と推測されるもの部分長クローンをPCRによりN末、及び、C末側に伸ばし、全塩基配列を決定した。得られた配列を利用して全長クローンをとり、得られた全長クローンを酵母の発現ベクターに組み込み、酵母で発現させ、得られたクローンの機能を調べた。これまでのところ、新たに、エンドウ種子より複合アミリン合成酵素、カンゾウ培養細胞よりルペオール合成酵素とβ-アミリン合成酵素、カボチャ芽生えよりククルビタ合成酵素、ヘチマ培養細胞よりイソマルチフロレノール合成酵素、シラカンバ培養細胞からルペオール合成酵素とβ-アミリン合成酵素、オリーブ葉より複合アミリン合成酵素、西洋タンポポと薬用ニンジンより機能未同定の酵素が得られている。次に、反応機構の解析を基盤とした新機能酵素の構築を目的として、初期にクローニングされた薬用ニンジン由来β-アミリン合成酵素とオリーブ由来ルペオール合成酵素のキメラ酵素を作成し、生成物制御に関与する部位解析を行ったところ、中央部からN末よりの部分が極めて重要であることが判明した。さらに、オリーブ由来ルペオール合成酵素の256番目のロイシンを位置特異的変異導入によりトリプトファンに改変したところ、この改変酵素は生成物としてβ-アミリンを与えた。この結果から、一アミノ酸変換によりトリテルペン合成酵素の生成物特異性を改変することが可能であることが判明し、今後のトリテルペン合成酵素の生合成工学へ向けて大きく前進した。
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