研究概要 |
粘液細菌Cystobacter fuscusから我々が発見したcystothiazoleは、抗真菌性と癌細胞に対する細胞毒性を示す。Cystothiazoleやその類縁体の遺伝子工学的生産を目指して生合成遺伝子の解析を行った。まず粘液細菌C.fuscusのゲノムDNAを抽出,精製し,これを鋳型としたPCRによって,cystothiazoleの生合成に関与するポリケチド生合成酵素(PKS)遺伝子の一部を増幅することを試みた。PKSの重要な領域であり,異種間においてもDNA塩基配列が良く保存されている,β-ケト合成酵素(KS)領域とアシル基転移酵素(AT)領域を標的としたPCRプライマーを計4つ構築した。他の微生物由来のPKS遺伝子を考慮すると,PCR産物は約1.3kb程度であると予想されたが,nested PCRも含めて,考えられる全ての組み合わせで,反応温度,プライマーや鋳型DNAの濃度等種々の検討をしながらPCRを行った結果,プライマーの組み合わせのうちの1つにおいて約1.1kbのPCR産物が得られた。これをクローニングし,シークエンス解析した結果,全くPKSとは無関係のホモロジーを持つDNA断片であった。現在は標的をKS領域に絞って,さまざまなPCRプライマーをデザインし,PCRの条件検討を行っている。またPCR産物をプローブに用いてのスクリーニングを予定しているが,その際のライブラリーには,より大きいサイズのゲノムDNAを導入できるベクター(BACなど)を用いる予定である。そのために現在,数種類のゲノムDNAライブラリーを構築するために,C.fuscusの大量培養とDNAの抽出を併行して行っている。
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