研究概要 |
粘液細菌Cystobacter fuscusから我々が発見したcystothiazole Aは、抗真菌性と癌細胞に対する細胞毒性を示し、ミトコンドリア呼吸阻害により活性を示す。Cystothiazole Aや新規類縁体の代謝工学的および遺伝子工学的生産を目指して、生合成経路および生合成遺伝子の解析を行った。まず安定同位体標識化合物の取込み実験により生合成前駆体を調べた結果、イソ酪酸を開始点にしてジペプチド(Cys-Cys)、ポリケチド(酢酸-プロピオン酸-酢酸)の順で生合成されることを明らかにした。ジペプチド部位は環化して、特徴的なビチアゾール環を形成する。このことより、本物質がポリケチドとペプチドのハイブリッド型代謝物であることが確認された。一方、類縁体cystothiazole B-Fはcystothiazole Aの酸化的代謝により生産されることを、cystothiazoIe Aの投与実験により解明した。推定生合成経路に基づき、ポリケチド生合成酵素PKSの高度保存領域の一つであるβ-ケト合成酵素(KS)領域を標的としたPCRプライマーを設計し、C.fuscusのゲノムDNAを鋳型としたPCRによってcystothiazole A生合成に関与するPKS遺伝子断片の増幅を試みた。その結果,約700bpのPCR産物が得られ、その塩基配列は遺伝子配列既知の類縁化合物のKSと約90%の相同性があった。次いでこの断片を起点に遺伝子歩行実験を繰り返し、現在までにcystothiazole A生合成遺伝子の約8割(30kbp)の制限酵素地図を明らかにすることができた。現在、残る6kbp部分の制限酵素地図の解明、全遺伝子のシークエンス解析を行い、相同検索により機能を解析中である。また、適当なDNA断片を導入したベクターをC.fuscus菌に導入し、cystothiazole A生合成への関与を検討している。
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