研究概要 |
ヘムなどの補欠分子を持った酵素では、化学修飾した補欠分子とアポ酵素との再構成がタンパク質表面に非天然分子を導入するために有効である。この手法を使うと、光増感剤や脂肪酸のような長鎖アルキル基、また人工の分子認識部位などを比較的自由にヘム蛋白質に導入することが可能である。得られた半合成タンパク質は、導入された非天然分子の機能に応じて、光スイッチ特性や、膜結合性のヘムタンパク質、あるいは特定ゲスト分子(糖類や金属イオンなど)に感受性をもつ分子へと機能変換されることが明らかとなった。本基盤研究ではこれらの研究をさらに飛躍発展させることを目的とし、超分子化学的なエンジニアリングについて特に光酵素構築に主眼を置いてその可能性について検討した。我々は、人工の光合成反応中心をミオグロビンの表面で部位特異的に組み立てることに成功した(I. Hamachi, et al., J. Am.Chem. Soc.,1999, 121, 5560. J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 231. Chem. Eur. J. 2000, 6, 1907.)。カテナン型の超分子構造を有する(ドナー・光増感剤・アクセプターのつながった)トライアッドを再構成によってアポミオグロビンやシトクロムに組み込むことにより、表面に増感剤とアクセプターを組み込んだハイブリッドタンパク質となる。この再構成人工蛋白質の光照射によって生成する電荷分離状態(光合成の初期過程)の寿命は、2ミリ秒を越える(正確な値を見積もれないくらい)ほど長く、あの複雑で巨大な天然の光合成反応中心とほぼ同等の値であった。様座な検討から、アポタンパク質によるラッピングの効果、それと連動するプロトン共役の電子移動などが長寿命化の主な要因であると推定された。
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