研究概要 |
神経変性疾患で障害された神経細胞の修復が可能になる画期的な薬物の開発を目指して,平成12年度は神経突起伸展物質の探索および評価系の確立と,すでに見出している神経突起伸展物質の合成研究を行った. (1)無血清培地神経細胞培養系の確立 ラット18日令胎児大脳皮質神経培養系が2種類の無血清培地Neurobasal/B27およびDMEM/N-2を用いることで確立でぎた.2種の系においてもホーノキオール、マスチゴフォレン、ネオビブサニンは神経突起伸展活性を発現したが,2種類の無血清培地の違いで活性発現に差異が認められた.ホーノキオールとマスチゴフォレンはDMEM/N-2培地において10μMで強力な神経突起伸展および神経死保護作用を示した.一方,ネオビブサニンはNeurobasal/B27培地で0.01μM-10μM濃度範囲で強力な神経突起伸展活性を示した.さらに,神経細胞生存率の指標としてWST還元法が利用できるようになった. (2)神経突起伸展活性天然物の探索と合成 サンゴジュ(Viburnum awabuki)から低濃度で神経突起伸展活性を示す数種の新規ジテルペンを見出した.また,中国産シキミ(Illicium merrilianum,Illicium jiadifengpi)からも同様の活性を示す新規セスキテルペン,メリリアラクトンAとジアデフェニンを単離構造決定した.両化合物は極めて珍しい構造からなり,今までに見出された活性化合物とは異なる作用機序が期待される. 活性物質の合成研究は順調に進み,酸化酵素HRPによるヘレベレテンジオールの二量化に初めて成功し,マスチゴフォレンAおよびBの全合成が達成できた.一方,プラジオンAの合成において困難が予想された16員環の構築にパラジウム触媒下分子内Stille-Kelly反応を適用することで,初めてその全合成に成功した.
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