研究概要 |
1.活性化合物ホーノキオールとネオビブサニンの作用機構解明。 先ず細胞内情報伝達系の特異的阻害剤を用いた薬理学的手法で作用機構を検討した。その結果,ホーノキオールはPD98059(MAP-K阻害剤)では作用が抑制されないが,LY294002(PI3-K阻害剤)で作用が完全に消失した。一方,ネオビブサニンは全く反対の結果を得た。このことはホーノキオールはMAP-K系を冗進することで神経突起伸展作用が発現し,ネオビブサニンはPI3-Kシグナル伝達系に作用していることが示唆された。今回購入した顕微鏡デジタル画像解析システムで,両化合物は濃度依存的に細胞内カルシュウムイオンが増大させ,上記の阻害剤存在下では細胞内カルシュウムイオンの変動が僅かであった。今後,各種阻害剤存在下で顕微鏡デジタル画像解析システムを用いて,推定できた細胞内情報伝達系に如何に関与しているか明にした後,これらキナーゼ分子のリン酸化状態をWestern plottingで確認する。 2.神経突起伸展活性化合物の合成。 神経突起伸展活性を示すビブサニン型ジテルペン,ビブンサニンBの合成ルートを開発するため,11員環ビブサニン型ジテルペン,ビブサニンFの合成を検討した。問題となる11環形成にパラジウムπアリル錯体反応を適用することでビブサニンFの合成に初めて成功した。今後,この合成戦略に従ってビブンサニンBの合成に取りかかる計画である。また,ヘルベルタンジオールの酸化二量化段階に酸化酵素(HRP)を用いることでマスチゴフォレンAおよびBの全合成が達成できた。さらに,ホーノキオールはパラジウム触媒下鈴木反応で容易に合成できようになり,より強力な活性化合物の創製研究も順調に進んでいる。 3.初代神経培養系を用いてアミロイドβ蛋白が誘発する神経細胞死抑制物質を引き続き探索し,新しい活性化合物を見出した。
|