研究課題
基盤研究(B)
本研究ではヘム分解酵素であるヘムオキシゲナーゼの研究を行った。まず高等動物由来の構成型ヘムオキシゲナーゼ(HO-2)の構造解析を行うために、大腸菌での大量発現系を利用してHO-2の高純度精製と結晶化条件のスクリーニングを実行した。その結果、これまでに知られている精製法ではHO-2の2量体などが含まれていることが明らかとなり、さまざまな改良を加えた精製法の開発により、現在考え得るレベルで最も純度の高い標品を得ることができるようになった。一方、バクテリア由来のヘムオキシゲナーゼ(HmuO)では大腸菌の大量発現系をもとに精製した試料を用いて結晶化することに成功していたので、HmuOの結晶構造解析に取り組むこととした。その実験に先立ち、可視吸収スペクトルや共鳴ラマンスペクトルなどの各種分光測定や、酵素反応解析などの基本的な酵素科学的性質をHO-2、HmuOについて調べた。それらの結果をもっともよく研究されている誘導型ヘムオキシゲナーゼ(HO-1)の結果と比較し、これらのタンパク質間ではヘム近傍の構造や酵素反応スキームが細かい点では異なっているものの、基本的には同一であることが確認された。HmuOのX線結晶構造解析においては、酸化型酵素の構造を1.4Åの分解能で、酸化型酵素を一電子還元した最初の中間体である還元型酵素の構造を1.7Åの分解能で、それぞれ決定することに成功した。この結果、ヘムの酸化還元に伴ってヘム周辺の酵素の構造が大きく変化することが明らかとなり、この構造変化によって作られる立体効果が、引き続き起こる酵素の結合と、その部位特異的な酸化反応に重要な役割を果たすことを示せた。また、本構造解析により、反応に必要なプロトンの取り込み機構に関しても新たな知見を得ることが出来、重要な成果となった。
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