研究概要 |
本研究の目的は、生理学的興味のあるプロリン特異性ペプチダーゼの立体構造をX線結晶解析により明らかにし、医薬品の開発に役立てることにある。 これまで種々のプロリン特異性ペプチダーゼについて、酵素化学的研究と遺伝子のクローニングを行ってきた。本年度の成果は、(1)プロリルアミノペプチダーゼについて精製酵素をPEG6000を沈殿剤として結晶化し、X線結晶解析により立体構造を解明した。酵素は、Ser113,His296,Asp268のCatalytic triadを構成する活性ドメインと、エキソペプチダーゼ作用を示すヘリックスドメインから成っていた。プロリンへの基質特異性発現機構として、Phe139がピロリジン環とスタッキングし、Glu204がプロリンのアミノ基とイオン結合することによりS1特異性を出していることが明らかになった。更に、Arg136がS1'のカルボニル酸素を認識することが明らかになった。(2)ジペプチジルアミノペプチダーゼIVについては、酵素遺伝子をクローニングし大腸菌で発現させ、大量培養の後酵素を単一に精製した。現在、PEG400を用いハンギングドロップ蒸気拡散法で結晶化中である。(3)プロリルエンドペプチダーゼについては、Flavobacterium meningosepticum由来の酵素を大腸菌で発現させる系を構築し、酵素を精製して、ハンギングドロップ蒸気拡散法で結晶化を行った。(4)ピログルタミルペプチダーゼの疎水ポケットにおける3つのフェニルアラニンの重要性、特にPhe-10の役割が大きいことが明らかになった。更に、ピロリドン環カルボニル酸素との相互作用本酵素のGlu16,Gln175及びLys179は、基質ピログルタミル残基結合部位近傍に存在し相互作用していると予想された。
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