研究概要 |
本研究の目的は、生理学的興味のあるプロリン特異性ペプチダーゼの立体構造をX線結晶解析により明らかにし、医薬品の開発に役立てることにある。 これまで種々のプロリン特異性ペプチダーゼについて、酵素化学的研究と遺伝子のクローニングを行ってきた。本年度の成果は、(1)プロリルアミノペプチダーゼ(PAP)について種々の合成基質を立体構造からPAPの基質特異性に関与すると推定されるPhe139、Tyr149、Glu204を選び変異を導入し、大腸菌で過剰発現させて精製し変異体酵素を得た。その結果、Phe139Ala変異体とGlu204Gln変異体でkcat/Kmが大きく減少したが、Tyr150Ala変異体では野生型酵素と大きな差は見られなかった。このことから、Phe139とGlu204はピロリジン環や、そのアミド基との相互作用することにより基質認識に関与すると推定された。次いで立体構造から明らかにする目的で、PAP阻害剤5-tert-Butyl-[1、3、4]oxadiazole-2-y1)-pyrrolidin-2-y1-methanoneを合成し、酵素との複合体の結晶解析を行った。ソーキング法により得られた阻害剤複合体結晶のX線解析を行った結果、Phe139とプロリンのピロリジン環がスタッキングを取り、Glu204がアミド基と結合することにより本酵素がプロリンを認識する機構がより明らかになった。(2)ピログルタミルペプチダーゼについて、サブユニット間ジスルフィド結合を形成しているCys190と同じ位置に存在するSer185をCysに置換した変異体を作成した。その結果、野生酵素と変異酵素の間のKm, Kcat, 最適pHに違いは見られなかったが、耐熱性は約30℃上昇することが分かった。さらに、変異酵素の還元型、非還元型のSDS-PAGEからBPGPサブユニット間にジスルフィド結合が形成されていることが確認された。
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