研究概要 |
本研究の目的は、生理学的興味のあるプロリン特異性ペプチダーゼの立体構造をX線結晶解析により明らかにし、医薬品の開発に役立てることにある。 これまで種々のプロリン特異性ペプチダーゼについて、酵素化学的研究と遺伝子のクローニングを行ってきた。本年度の成果は、(1)プロリルアミノペプチダーゼ(PAP)についてAbu, Nva-bNAの合成基質を用い、5員環認識ポケットが存在することを推定した。更に、PAPの基質特異性に関与すると推定されるPhe139, Tyr149,にF236を対象に加え。一方、Glu204にE232を対象として選び変異を導入し、大腸菌で過剰発現させて精製し変異体酵素を得た。その結果、このことから、Phe236とGlu232はピロリジン環や、そのアミド基との相互作用することにより基質認識に関与すると推定された。次いで立体構造から明らかにする目的で、PAP阻害剤Pro-5-tert-Butyl-[1,3,4]oxadiazole-2-yl)-pyrrolidin-2-yl-methanone (Pro-TBODA)とAla-TBODAを合成し、酵素との複合体の結晶解析を行った。ソーキング法により得られた阻害剤複合体結晶のX線解析を行った結果、プロリンのピロリジン環が疎水ポケットに入ることと、プロリンのアミノ基とGlu204, Glu232との塩結合により本酵素がプロリンを認識する機構がより明らかになった。(2)クレアチニナーゼのX線結晶解析を行った。クレアチニンはアミノ酸ではないが、プロリンと同様5員環を構成することから、プロリンの基質認識機構と比較研究することを行った。その結果、疎水ポケットへのはまり込みと水素結合により基質の5員環が認識されるkとが推定された。
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