研究課題/領域番号 |
12480185
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
岡島 史和 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (30142748)
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研究分担者 |
佐藤 幸市 群馬大学, 生体調節研究所, 助手 (00302498)
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キーワード | スフィンゴシン1-リン酸 / リポ蛋白 / 血管内皮細胞 / 細胞遊走 / EDG-1 / EDG-3 / アンチセンスオリゴヌクレオチド / HDL |
研究概要 |
従来より、低密度リポ蛋白(LDL)特に酸化LDLは動脈硬化促進性に働き、一方、高密度リポ蛋白(HDL)は抗動脈硬化性に働くとされる。我々はHDLによる抗動脈硬化作用がスフィンゴシン1-リン酸(S1P)などの脂質性シグナル分子によってメディエートされているという仮説にたち、解析してきた。今年度は従来からの血管内皮細胞の生存保護作用に加え遊走促進作用も取り上げ、リポ蛋白中S1Pの役割に関して解析した。その結果、(1)血管内皮細胞を無血清下に培養した際の細胞機能低下(培養皿からの細胞離脱、アポトーシス)は酸化LDLの添加でさらに低下するが、このような細胞機能低下はHDL、S1P添加で抑えられる。また、ボイデンチャンバー法を用いた細胞遊走能もHDL、S1Pで著明に促進された。(2)HDLをアルカリまたは酸性下での有機溶媒分画、薄層クロマトグラフィー分画を行ったところ、S1P画分にのみこれらの活性が回収された。(3)血管内皮細胞にはS1P受容体の中で、EDG-1ならびにEDG-3が発現している。この受容体発現を抑制するためにアンチセンスオリゴヌクレオチドを作用させると、サブタイプ特異的に受容体発現を抑制するとができる。このような条件下でHDL、S1Pによる細胞生存保護、遊走促進作用を調べたところ、細胞生存保護作用は主にEDG-1発現の抑制のみで、一方、遊走促進作用はEDG-1、EDG-3受容体の発現抑制で消失した。以上の研究結果から、我々はHDLによる内皮細胞の生存保護、遊走促進作用にはS1が中心的な役割を果たし、これらの作用はS1P受容体であるEDG受容体を介していると結論した。
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