研究概要 |
申請者らは、心筋細胞においてミトコンドリア数が劇的に増加しているJVSマウスを用いて,これまでにJVSマウス心筋ミトコンドリアでは,呼吸活性,各種チトクローム含量,ATP-Pi交換活性が正常マウスに比べ低下(30〜70%)していること,ATPase活性は逆に約2倍に増加していること,H^+-ATP合成酵素のサブユニットの発現量は(c(P1),c(P2),e,IF1,βについてはmRNAレベル,αサブユニットとcoupling factor6についてはタンパクレベル),JVSマウスと正常マウスとで差がないことを明らかにし,JVSマウスの心筋細胞では機能的に不完全なミトコンドリアが増生していることを明らかにしている. 本研究では,ミトコンドリアの分裂・増殖機構を解明するために,蛍光Differential Display法によりミトコンドリア数の増生に関わる新規蛋白質因子の遺伝子の単離を試みた.その結果,ミトコンドリア数の増生に関与する可能性のある9種のcDNA断片を得ることに成功した.それらのcDNAの塩基配列を決定し,ホモロジーサーチを行なったところ,3つの遺伝子断片については既知の遺伝子であり,その他の6種については,新規の遺伝子であることが明らかになった.現在,6種の遺伝子の完全長cDNAクローニングを行なっているところである. また,今回単離した遺伝子産物の生理機能を調べるために,ミトコンドリア輸送シグナルペプチドを融合させた蛍光タンパク発現ベクターを培養細胞にトランスフェクションして,生細胞中におけるミトコンドリアの動的変化をタイムラプスデコンボリューションCCD蛍光顕微鏡下で直接観察できるシステムを開発した.今後,このシステムを用いてミトコンドリア数の増生に関わる因子を明らかにしていきたい.
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