研究概要 |
研究では,ミトコンドリア数が劇的に増加増殖(増生)している全身性カルニチン欠乏マウスであるJVSマウスの心筋細胞に着目し,ミトコンドリアの増生に係わる分裂と融合に関わる蛋白質複合体を解明することを研究目的として,以下の研究成果を得た. 1)JVSマウス心筋ミトコンドリアの酸化的リン酸化系の異常性 心筋ミトコンドリアのstate 3の、呼吸活性は,JVSマウスは対照マウスと比べると,グルタミン酸系,コハク酸ともに減少していた.また,呼吸鎖複合体の各種シトクロム含量は,シトクロムa+a3,シトクロムb,シトクロムc+c1とも,に減少していた.ATP-Pi交換活性はJVSマウスでは対照マウスの約1/3に減少していたが,驚くことに,ATPase活性は逆に約2倍に増加していた. 2)Differential Display法によるミトコンドリアが劇的に増生しているJVSマウスの心臓からのミトコンドリアのバイオジェネシスに関わる遺伝子の単離 JVSマウスの心筋細胞で発現しているmRNAと正常マウスでのmRNAとの差をDifferentiai Display法を用いて調べたところ,JVSマウスの心筋細胞で特異的に発現している6種の未知遺伝子を発見した.これらの塩基配列について,Genomnetの最新のデータベースでサーチしたが,同一のものは見出されず,新規の遺伝子断片であることが判明した. 3)Thymidine double block法によるHeLa細胞の細胞周期の同調培養とミトコンドリアの形態変化の観察ミトコンドリア移行シグナルを付加した蛍光蛋白ベクターpDsRed-Mitoを50〜70%の高効率で各種動物細胞にトランスフェクションさせる実験条件を確立させ,ついでThymidine double bloc法によるHeLa細胞の細胞周期の同調培養に成功,細胞周期によりミトコンドリアの形態がどのように変化しているかについて,FACSとCCD蛍光顕微鏡を用い,世界に先駆けて観察に成功した.
|