研究分担者 |
中谷 良人 昭和大学, 薬学部, 講師 (80266163)
矢ノ下 玲 昭和大学, 薬学部, 助手 (00224915)
村上 誠 昭和大学, 薬学部, 助教授 (60276607)
桑田 浩 昭和大学, 薬学部, 助手 (80286864)
新原 智子 昭和大学, 薬学部, 助手 (60266161)
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研究概要 |
現在までに、哺乳動物からは19種類のホスホリパーゼA2(PLA2)の遺伝子が単離されている。本研究では、分泌性PLA2(sPLA2)群と細胞質PLA2(cPLA2)群に属する酵素について、細胞機能の解析と生体内発現について検討した。 1. sPLA2群 各種sPLA2とその変異体を導入したHEK293またはRBL-2H3細胞株を用い、アラキドン酸代謝に及ぼす効果を検討し、以下の事実を明らかにした。(1)II型様sPLA2(IIA, IID, IIE, V)は活性化細胞に作用し、刺激依存的にアラキドン酸を遊離する。これらsPLA2は細胞表層のヘパラン硫酸プロテオグリカンであるグリピカンに結合して細胞内に取り込まれ、細胞質内小胞と核膜に蓄積する。(2)X型sPLA2は形質膜外層のホスファアチジルコリン(PC)に作用し、未刺激細胞からアラキドン酸を遊離する。(3)IIF型sPLA2は特徴的なC末端延長配列を介して形質膜に結合し、活性化細胞からアラキドン酸を遊離する。(4)III型sPLA2は分子中央のsPLA2ドメインが活性の細小単位であり、おそらく形質膜表層のPCを認識して未刺激細胞に作用し、アラキドン酸を遊離する。N末とC末に存在する固有のドメインは、本酵素を細胞接着斑に集積させる役割を持つ。更に、II型様酵素(IIA, IID, IIE, IIF, V)が炎症時に組織特異的に誘導される酵素であることに着目し、特異抗体を用いてヒト病理組織での発現と分布を調べた。V型sPLA2が虚血心筋、B型肝炎感染肝細胞、肺炎気管支上皮細胞に強く誘導されること、リウマチ関節炎では従来より知られていたIIA型sPLA2だけでなく、IIE, IIF, V型sPLA2も誘導されることが明らかとなった。 2. cPLA2群 従来より検討してきたcPLA2αについて、本酵素が細胞活性化に伴って活性を発現する分子機構について更に検討を進めた。その結果、(1)本酵素はC2ドメインを介して細胞骨格蛋白であるビメンチンに結合し、Ca2+依存的に各周縁膜に移行する、(2)本酵素のSer505のMAPキナーゼによるリン酸化に加え、Ser727のMAPキナーゼ活性化キナーゼMNK1によるリン酸化が細胞内での活性化に必須である、ことを明らかにした。更に、(3)本酵素がアポトーシス細胞中でcaspase-3により限定分解されて生じたN末断片が、cPLA2α及び一部のsPLA2によるアラキドン酸遊離をdominant-negative的に抑制することを明らかにした。 更に、新たなcPLA2分子種であるcPLA2γについて、以下の結果を得た。(1)本酵素は活性にCa2+を必要とせず、構成的に小胞体膜に結合している。この膜分布には、C末のイソプレニル化が関与している。(2)本酵素発現細胞は構成的にアラキドン酸を遊離し、炎症刺激により更に増強される。本酵素のアラキドン酸遊離能にはC末のイソプレニル化が必須である。
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