研究概要 |
ダイニン分子の4つのATP結合部位の役割を明らかにするために、今年度は、細胞質ダイニンの単頭フラグメントの単離を試み、そのATPase活性と運動活性を調べた。ウシ脳から精製した細胞質ダイニンはホモダイマーであるが、これを尿素で処理することにより単頭に分離することができた。このときダイニン重鎖と中関軽鎖に変化はなかったが、中間差が約40%解離していた。この単頭ダイニンフラグメントは、in vitroで双頭ダイニンとほぼ同じ速度で微小管をすべり運動させたが、溶液中のATPaseは約3倍に上昇していた。この原因として、単頭ダイニンの性質であるためか、あるいは中間軽鎖の解離によるため、尿素処理による影響のためなどが考えられる。細胞質ダイニンにはCTPase活性が存在するが、CTPでは微小管のすべり運動をひき起こすことはできなかった。 さらに、単頭内に存在する6つのサブドメインの機能を明らかにするために、D1, D1-D2, D1-D4,に相当する領域の酵母細胞質ダイニンの遺伝子を大腸菌内で発現し、そのフラグメントの性質を調べた。D1にはほとんどATPase活性がみられなかったが、D1-D2では脳から精製したintactな細胞質ダイニンと同等のATPase活性が存在し、さらに、D1-D4フラグメントでは、尿素処理して得られた単頭ダイニンと同等のATPase活性が存在した。 これらの結果から、今後、ATPase機能ドメインとCTPase機能ドメインを特定し、書くATP結合部位の役割を明らかにしていくことができると考えている。
|