研究課題/領域番号 |
12480196
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
生物物理学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
豊島 陽子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (40158043)
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研究分担者 |
枝松 正樹 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (60251328)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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キーワード | ダイニン / ATP結合部位 / Pループ / テトラヒメナ / 繊毛内腕 / 単頭ダイニン / 微小管 / ミカエリスーメンテン |
研究概要 |
ダイニンは、微小管と相互作用して働くモータータンパク質として最初に同定されたが、分子量が巨大で複雑な組成をしており、精製タンパク質としての取り扱いが難しいために、その分子レベルでのメカニズムの研究は後から同定されたキネシンに比べて遅れている。最近我々のグループは、いくつかの種類の精製したダイニンの運動活性をIn vitroで調べることにより、1分子で微小管上を連続的に運動する性質(processivity)をATP濃度によって変化させるもの、ATP非存在下で微小管と結合しないもの、高濃度ATP存在下で運動が阻害され、その阻害がADPによって回復されるものなど、キネシンやミオシンでは見られない興味深い性質を示すダイニンを見いだした。 本研究では、これらのダイニンの運動性と生化学的性質を組み合わせて詳細に調べ、4つのATP結合部位の性質とその役割について明らかにすることを目的とした。ATP結合部位が4つ存在することは、進化上よく保存されているのでダイニンにとって積極的な役割があるに違いない。これを明らかにすることは、他のモータータンパク質とは異なるダイニン特有のエネルギー転換機構の解明に不可欠である。 鞭毛・繊毛内には多種のダイニン分子が存在するために、その機構を解明するのは不可能であった。本研究では、精製した単頭ダイニンの運動能を調べることにより、タンパク質1分子の性質としてATP濃度感受性を明らかにすることができた。本研究から、モノマーのダイニンが実際に複数のATPやADPを結合すること、加水分解に関与しないADP結合部位が存在し、結合や解離の状態の情報を加水分解部位に伝えて活性を制御していることが明らかになった。ダイニンの調節機構として、重鎖自身による調節、ATPによる調節という概念は全く新しいものである。分子レベル複数のATP結合部位の機能と役割が確認されたことで、今後のダイニン研究に新たな方向を与えることができた。
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