双頭構造をもつミオシンVが1分子でアクチンフィラメントに沿って連続的(プロセッシブ)に運動することを我々は既に見出している。本研究では、単頭ミオシンVでも運動するかどうか、また、その運動がプロセッシブであるかどうかを明らかにすることを目標とした。また、ミオシンVのATPase反応に伴う構造変化を我々が開発した高速AFMでリアルタイムに撮影することにも挑戦した。前年度までに、単頭ミオシンVの調整法、蛍光標識法を確立し、運動することを見出している。14年度は、この運動がブラウン運動ではなく、アクチンフィラメントの1方向に運動することを明らかにすることを目指した。この研究により、以下の結果を得た。 1)P端(マイナス端)を明るく染色したアクチンフィラメントを調整することにより、単頭ミオシンVの運動方向を観察できるようにした。運動の変位をヒストグラムにとると、B端(プラス端)に向かって動く割合がP端に向かって動く割合より2倍高く、単頭ミオシンVの運動がATPase反応によって駆動される運動であることが明らかになった。 2)上記の結果より、単頭ミオシンVの運動はB端にバイアスのかかったブラウン運動であり、バイアスはATPase反応によって生ずると結論される。また、上記ヒストグラムより、ブラウン運動成分を差し引いてATPase反応によって駆動される運動の距離を見積もると、約250nmとなる。運動の確率が低いことから、観察された運動は1ATPターンオーバーで起こると判断される。 3)ケージドATPにUVパルスを照射してATPを短時間の内に生成させる前後のミオシンVの映像を捉えた。その結果、UVパルス直後に頭部・頚部間に極めて大きな屈曲が起こり、その屈曲は2秒程度維持されたのちに、もとの状態に戻った。この大きな構造変化は所謂パワーストロークを引き起こす原因になっている可能性が高い。
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