研究課題
バクテリオロドプシンは高度好塩菌の細胞膜に見出された蛋白質で、光エネルギーを利用してプロトンの能動輸送を行う。7本の膜貫通へリックスからなり、発色団としてレチナールを含む。この蛋白質は生物物理学的手法を用いて活発に研究されてきており、構造・機能解析の最も進んだ生体イオンポンプとしても知られる。しかし、プロトン輸送の作動原理の解明には反応中間体の構造解析が不可欠であり、その立体構造を高分解能で求めることが待ち望まれていた。我々は、これまでに、膜融合を利用して膜蛋白質を結晶化することを試み、脂質分子を含んだバクテリオロドプシンの三次元結晶を作成する技術の開発を行ってきた。また、低温X線回折測定法を適用してX線損傷の影響の軽減を図り、水分子を識別できる程度の分解能の構造解析を実現した。本研究においては、バクテリオロドプシンの反応中間体の構造解析を行うため、光照射下で結晶を急速凍結する方法を開発し、また、単結晶のX線回折と吸収スペクトルの同時測定を行うための装置を試作した。このような開発研究を積み重ねることにより、バクテリオロドプシンのプロトン輸送サイクルにおける重要な反応状態(K中間体およびM中間体)の構造決定を行うことができた。特にM中間体の構造解析から、蛋白質を構成する7本のヘリックスのうち1本(Gヘリックス)が膜面に垂直方向にスライドすることを明らかにした。また、バクテリオロドプシン類似蛋白質であるアーキロドプシンについても高分解能の構造決定を行うべく結晶化条件の精密化を行った。
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