研究概要 |
本研究では、ランダム配列をもつポリペプチド(140アミノ酸残基)から実験室内進化を行った。140アミノ酸残基のポリペプチドには、20^<140>種類の可能な配列がある。この膨大な数のから、機能のあるタンパク質を進化させることは容易ではない。どれくらいの初期配列からスタートすれば、進化が可能であろうか?変異によって、ランダムなアミノ酸配列はその物性を変化するのだろうか?これらの問題に答えるために、任意に選んだたった10種類のランダム配列に対して、エステルの加水分解反応の遷移状態アナログ(CAII)に対して、親和性を調べた。その結果、10種類の中にも親和性や物性に関して十分な多様性があることがわかった。そこで、親和性の最も高い配列に対して変異と選択を繰り返した。この際、各世代の配列の数は10種類に限った。その結果、6世代目まで、親和性に関して十分な親和性の増加が見られた。精製して1、3,6世代目のタンパク質はエステルの加水分解活性をしめした。さらに、選択に用いたCAIIをいれると、進化実験で得られたポリペプチドの触媒活性は阻害された。このことは、何らかの活性部位がすでに形成されていることを示している、CAIIに対する親和性と触媒活性の活性化自由エネルギーの間には直線関係があることがわかった。これは、酵素活性の増加に関して遷移状態仮説が成り立っていることを示している。これらの結果より、たった10種類の任意の配列からでも、触媒機能が進化しうることがわかった。
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