真核生物の染色体は、機能的および構造的に明確なドメインを構成している。その中でもセントロメアは、スピンドルと染色体の連結をつかさどり、染色体分配に本質的な役割をもつ。ほとんどの真核生物のセントロメアには、リピート配列が存在し、そこにヘテロクロマチン構造が形成されることが知られているが、その役割はよく分かっていなかった。本研究で、分裂酵母を用いた解析から、染色体分配に必須の役割をもつ染色体接着因子コヒーシンが、ヘテロクロマチンタンパク質Swi6に依存してセントロメアに濃縮されることを突き止めた。swi6変異株あるいはSwi6の局在を阻害する変異株では、コヒーシンのヘテロクロマチン領域への濃縮が解消され、コヒーシンのわずかな欠損で動原体機能に致命的な欠損を生じるようになった。また動物細胞では、ヘテロクロマチンタンパク質HP1(Swi6ホモログ)が、セントロメアに加えてそれ以外の機能未知の染色体部位にも局在することが知られている。分裂酵母では、接合型遺伝子の制御カセット部位にもSwi6が局在するが、ここでも、Swi6に依存して凝集するコヒーシンが、カセットの正しい組み換えに重要な役割をはたしていることが明らかとなった。ヘテロクロマチンタンパク質Swi6/HP1機能の一端が、染色体上における局所的な「コヒーシン機能の濃縮」にあることが強く示唆された(Naturc Cell Biol.2002)。この発見は、減数分裂でセントロメアと腕部で見られる染色体接着の違いをつくる機構と密接に関係しているものと考えられ、今後の本研究課題の発展につながるものと期待される。
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