Hu蛋白質はRRM型のRNA結合ドメインを3個持つRNA結合蛋白質で、ショウジョウバエの神経形成に重要であるELAVの脊椎動物ホモログである。Hu蛋白質はAU-rich element (ARE)と特異的に結合することがわかっており、3非翻訳領域にAREを持つmRNAの安定化や、翻訳の上昇に働いていることが示唆されている。また、神経特異的な発現を示す3種類のHu蛋白質については、神経細胞分化を正に制御する機能をもつことがいくつかの実験から示されている。本研究では以下のことを明らかにした。まず、HuRは核、HuDは細胞質と明瞭にその細胞内局在に違いが見られるが、HuD内に見いだされた細胞質局在に働く領域(CLS)はHuRにおいても機能的に保存されていることが明らかになった。また、HuD蛋白質内のアミノ酸残基に部位特異的な変異を導入することによって、RBD3のRNP-2に相当するアミノ酸残基が細胞質局在に必須の役割を果たしていることが明らかになった。CLSの活性は、他のRNA結合蛋白質由来のRNP-2モチーフでは相補できなかったことから、HuDのRBD3のRNP-2モチーフに特異的な機能であることが示唆された。さらに、RBD3のRNA結合能と細胞内局在は独立していることが分かった。一方、細胞内クロスリンク実験によって、Hu蛋白質は細胞内において多量体を形成することが明らかになった。この多量体形成はHu蛋白質がRNA結合状態にある時に強く促進されることから、Hu蛋白質の多量体は特異的mRNAの安定性、もしくは翻訳活性の調節に密接に関係することが示唆された。
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