ストレスで活性化するMAPキナーゼスーパーファミリーJNK、p38の経路の上流に位置するMST1の機能を検討した。MST1は細胞に発現すると細胞膜のblebbingや核の凝縮を引き起こし、アポトーシス様の形態変化を引き起こす。本研究において、MST1はこれらのアポトーシス様の形態変化をJNKの活性化を介して引き起こしていることを明らかにした。また、MST1はJNKの活性化によりDNAのヌクレオソーム単位の断片化を引き起こすが、これはカスペースの活性化を介していることが明らかになった。一方、核の凝縮と細胞膜のblebbingはカスペース活性を抑制しても誘導された。従って、MST1-JNK経路はカスペース依存的・非依存的両方の経路を介して細胞死を誘導することが示唆された。 MST1は、カスペースの上流に位置するだけでなく、カスペースによって切断されて活性化をされることを我々のグループは以前に報告した。本研究によって、MST1はC末端側に核外移行シグナル(NES)を有しており、NES依存的に細胞質局在を示すこと、またカスペースによる切断によりMST1のNESがキナーゼドメインから離れ、キナーゼドメインの核移行が起こることが明らかになった。さらに、核内に局在することがMST1による核凝縮誘導を促進することも示唆された。従ってMST1が、アポトーシス刺激によって核内移行し、核の凝縮を誘導するメッセンジャーとして働いている可能性が示唆された。
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