1)Jab1ノックアウトマウスを用いた解析: Jab1およびCOP9シグナロソームの生理学的機能を解析するために、定法に従いJab1のノックアウトマウスを作製し解析した。その結果、以下のことを明らかにした。Jab1ヘテロマウスは正常に生まれてくるが、Jab1ヌルマウスは全く生まれてこなかった。胎児を解析したところ、Jab1ヌルマウスは胎生7.5日目で明らかな形態異常を起こしていた。6週齢のマウスの体重を測定したところJab1ヘテロマウスは野生型のマウスに比べて平均で1割強、最大で50%もの体重の減少が見られた。p27ヌルマウスは野生型マウスに比べ巨大化することから、Jab1ヘテロマウスではp27の分解機構が破綻し個体の小型化がおこっていると推測した。 2)Jab1と細胞ガン化との関係解析: 様々なガン由来の細胞株を用いてp27やJab1などの分子の遺伝的変異、発現量等を解析した。その結果、慢性骨髄性白血病(Chronic Myelogenous Leukemia : CML)由来の細胞においてJab1を含む複合体の存在形式が他の造血系細胞と異なることが分かった。この変化はCMLの原因遺伝子Bcr-Ab1に起因しており、CML細胞内ではBcr-Ab1によって活性化されるPI3KおよびMAPK経路によりJab1を含む複合体が変化し、p27の発現量が低下していた。 以上よりJab1によるp27分解制御は個体形成や細胞癌化の過程で重要な経路であると考える。
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