研究概要 |
エンドサイトーシスの機構解明のために、昨年度われわれはリポソームを膜成分としてATPとGTP存在下に脳細胞質と反応させて小胞を形成させ、その小胞の大きさ、形成量を定量化するin vitro実験系を確立した。この実験系を用いて以下を明らかにした。 1.小胞形成のDynamin依存性 脳細胞質による小胞形成のDynamin 1依存性を調べる目的で,、脳細胞質から特異的抗体を用いてDynamin 1をdepleteしたものを上記実験系に用いたところ、小胞形成が80%阻害された。これにより、上記実験系の小胞形成がエンドサイトーシスによる小胞形成を再現していることを示した。 2.小胞形成に伴うイノシトールリン脂質の動態 昨年度われわれは小胞形成に伴って膜リン脂質phosphatidylinositol-4,5-bisphosphate (PIP_2)がphosphatidylinositol-4-phosphate、さらにphosphatidylinositolに分解されることを見い出した。今年度は小胞形成に伴うPIP_2の合成の詳細について解析した。シナプスのクラスリン依存性エンドサイトーシスにおいて、クラスリンアダプタータンパクAP2はPIP_2に親和性を持ち、AP2の膜結合はGTFP結合型(活性型)ADP-ribosilation factor 6 (Arf6)により増加することから、Arf6がPIP_2合成を促進すると考えられた。そこで上記実験系においてPIP_2分解系をneomysinにより阻害し、Arf6によるPIP_2合成量の変化を調べた。GTP結合型Arf6存在下でのPIP_2量は、Arf6非存在下に比べ6.6倍、野生型Arf6存在下に比べ3.8倍に増加していた。この反応中には、PIP_2合成酵素PI-4-P5-kinaseの活性を上昇するPhosphatidic acidの生成はみられなかったことから、Arf6がPI-4-P5-kinaseを直接活性化する可能性が示唆された。
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