研究概要 |
TGF-βシグナルに関わる新規分子を取得することを目的として,yeast two-hybridスクリーニングによりBMP receptor associated molecule(BRAM)に結合する因子,BRAM interacting protein(BIP)を単離した。BIPホモログはヒト,アフリカツメガエル,線虫C. elegansに存在していた。C. elegansにはBRAMホモログ、BRA-1, BRA-2が存在し、C. elegans BIPがこれらと相互作用することが期待されたので,C. elegansを用いたBIPの機能解析を行った。C. elegans BIPは733アミノ酸をコードした。C. elegans BIPとBRA-1, BRA-2の相互作用を検討し、C. elegans BIPはBRA-1, BRA-2の両者と結合することが明らかとなった。次にC. elegans BIPの組織発現を検討し,咽頭筋とhypodermisで強い発現が見られたほか,尾部の神経細胞にも発現が認められた。尾部神経での発現は,線虫のdafシグナルの受容体DAF-1およびBRA-1の発現部位とオーバーラップするものであり,また,咽頭筋とhypodermisでの発現は,smaシグナルの受容体であるSMA-6およびBRA-2の発現部位と重なっている。以上の結果から,C. elegans BIPはBRA-1あるいはBRA-2を介してdaf経路あるいはsma経路に関与している可能性が考えられた。次にdouble stranded RNA interference(dsRNAi)を用いて検討した。野生型にBIP dsRNAをインジェクションし,F1を観察したところ野生型の体長は1.18±0.09mmであるのに対し,BIPdsRNAをインジェクションした群では1.00±0.09mmと,BIPの機能欠失によって体長の短いSmaの表現型を示すことが明らかとなった。そこで,sma経路のリガンドであるDBL-1の過剰発現変異体dbl-1(++)に対するBIP dsRNAiを検討したところ,dbl-1(++)の体長は1.53mmであるが,これにBIP dsRNAをインジェクションした群では,体長が1.24mmまで短くなり野生型と同程度になる個体が認められた。さらに,sma経路の標的遺伝子であるlon-1機能欠失変異体にdsRNAiを行ったが,この変異体に対しては作用が全く認められなかったことから,C. elegans BIPはsma経路においてリガンドDBL-1より下流かつ標的遺伝子であるLON-1より上流に位置することが確認された。以上の結果よりBIPはBRA-2に作用してsma経路をポジティブに調節している可能性が高いと思われた。
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