研究概要 |
本研究で得られた研究成果は以下の通りである。 1 マボヤのotx相同遺伝子Hrothが、中枢神経系の前方部である脳胞のマーカー遺伝子TRPの転写を正に制御していることを示した。 2 また、Hrothが脳胞の分化、および前方の外胚葉に由来する組織のパターン化に関わっていることを明らかにした。 3 Zic関連遺伝子HrZicNが、proneural遺伝子として機能するだけでなく、卵割期に、幼生の中軸構造となる脊索の形成にも関わっていることを見出した。 4 脊椎動物胚で左右軸形成に関わるpitx遺伝子について、マボヤのpitx相同遺伝子HrPitxを単離し、その発現パターンを明らかにし、それが脊椎動物の3つのPitxパラログ遺伝子の発現とよい対応関係を示すこと、脊椎動物胚での知見と同様にNodalの下流にあることを明らかにした。 5 高等脊椎動物およびショウジョウバエの中枢神経系において、otxとともに最前方で発現しているemx遺伝子が、ホヤでは中枢神経系で発現しないことを示し、emx/emsの中枢神経系における発現の獲得が、前口動物、後口動物で独立に起こったという考え方を提唱した。 6 脊椎動物のオーガナイザーで発現し、頭部形成に極めて重要な働きを持つlhx1遺伝子が、下等な脊索動物では、原腸形成期に発現せず、代わりにlhx3が発現することを明らかにした。 7 ホヤotx遺伝子の転写調節領域を同定し、これらの転写調節領域が、ホヤの2つの分類群のうちマボヤとは別の分類群に属するカタユウレイボヤの胚内でも、ほぼ正しく働くことを見出した。 8 Hox遺伝子について、カタユウレイボヤゲノムプロジェクトに参加する機会を得、カタユウレイボヤではメンバー遺伝子の7,8,9,11が欠失していることを示し、ゲノム論文の中に加えた。
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