研究概要 |
2000年になって、アメリカのカーネギー研究所の研究員のA.Sanchez Alvarado博士によってプラナリアでのRNA干渉法による遺伝子ノックアウト・プラナリアの作成法が開発された。今までにプラナリアの形態形成関連遺伝子は数多く単離されていたが、その機能については不明なものが多く、遺伝子ノックアウトによる機能解析が待たれていた。 本研究では、アメリカのカーネギー研究所の研究員のA.Sanchez Alvarado博士との協力を仰いで、今までに単離していた各種の形態形成関連遺伝子のノックアウト解析を行った。また、同時に新規の形態形成関連遺伝子の単離についても行った。 研究成果として、従来から得られていた遺伝子で明瞭な表現型が得られたものとしては、DjotxA遺伝子のノックアウト・プラナリアで視神経が発生しないという発現パターンから期待される結果が得られた。その他のDjFGFRI, DjFGFRII(FGF受容体)、DjBMPRI, DjBMPRII(BMP受容体)、についてははっきりとした表現型が得られなかった。新規遺伝子としては、DjFoxA(Fox)、Djnlg(noggin-like)といった形態形成関連遺伝子をクローン化したが、RNAi法で明瞭な表現型が得られなかった。 しかし、DNA chip解析によって得られたプラナリア頭部で特異的に発現する721遺伝子を破壊すると全身に脳が形成されて、眼が体中にできるという劇的な表現型が得られ、かつはっきりとした表現型が得られなかった2つのFGF受容体を同時にノックアウトすると脳だらけになる表現型が抑えられるという極めて明瞭なる結果が得られた。この発見は、脳がなぜ頭に限局するのかの分子機構を明らかにしたという極めて重要な発見となった。
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