これまで、ミトコンドリア依存性アポトーシスにおけるアダプター分子Apaflを欠損するマウスを作成し、Apaflが胎仔脳に強く発現することやApafl欠損胎仔ではニューロンのアポトーシスが生じずニューロンの蓄積による脳の変形が生じること、またアポトーシス抑制分子Bcl-xlを欠損するマウスでは、ニューロンに過剰なアポトーシスが生じることを報告してきた。本研究の目的は、Apafl、Bcl-xl両分子を欠損するマウスを解析する事により、胎生期、特に神経系の発生過程におけるアポトーシスの制御機構を解明することである。 Apafl、Bcl-xl両分子を欠損するマウス胎仔においては、Apafl単独欠損マウスと同様に脳の変形やアポトーシスの低下が見られ、Bcl-xlの欠損がApafl欠損による表現型を補えないことが示された。Apaflはmitosis期にあるニューロン前駆細胞にアポトーシスを誘導する一方で、Bcl-xlはpost-mitosis期にあるニューロンのアポトーシスを抑制することが示唆されている。しかしながら、Apafl、Bcl-xl両分子を欠損するマウス胎仔は、Bcl-xl単独欠損の場合と同様胎生13日に死亡することが明らかとなった。両分子欠損マウスの胎仔肝においては、Bcl-xl単独欠損と同様の血球系細胞のアポトーシスが観察され、このことは逆にApafl欠損がBcl-xlの欠損による表現型を補えないことを示している。ApaflやBcl-xlなどのアポトーシス関連分子は、すべての細胞で同じ働きを持つわけではなく、胎生期の様々な臓器・組織において異なる要求性に応じて細胞のアポトーシスを制御していることが示された。
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