研究概要 |
パーキンソン病において脱落することが知られている中脳黒質ドーパミン作動性ニューロンに着目し、脳由来神経栄養因子(BDNF)の生存促進効果における細胞質型チロシンホスファターゼShp-2の役割についてアデノウイルス発現系を用いて解析を行った。その結果、Shp-2が培養黒質ドーパミン作動性ニューロンにおいてBDNFによる生存促進効果を正に制御する因子であること、さらにはShp-2によるBIT/SHPS-1の脱リン酸化が、BDNFによる生存シグナル経路に関与している可能性を見いだした。また、我々はShp-2およびBIT/SHPS-1がPI3-KとMAPKの活性化を介してBDNFの生存促進効果を増強していることを明らかにした。以上の研究は中脳黒質ドーパミン作動性ニューロンの変性を原因とする神経変性疾患であるパーキンソン病に対する根本的治療の確立に結びつくと考えられる。 幼若ラットより培養した小脳顆粒細胞は、高カリウム(26mM ; HK)を含む培地中で生存、成熟させることができる。成熟後、低カリウム(5mM;LK)培地に交換することにより、急速にアポトーシスを引き起こすことができ、その結果、24時間で50%以上もの細胞が死滅する。この低カリウムで誘導されるアポトーシスにおけるMAPキナーゼスーパーファミリー(ERK, JNK, p38 MAPK)の役割については不明な点が多い。本研究において、我々は、(1) p38 MAPKがc-Junの活性化およびアポトーシス誘導に深く関与していること、(2) ASK1がp38 MAPKがc-Junの活性制御を行う上流因子であること、(3) ASK1-p38 MAPK-c-Jun経路がPI3-Kによって活性化抑制を受けていること、(4) ERKがp38 MAPKの下流でアポトーシス誘導に関与していることを明らかにした。
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