研究概要 |
1-Benzyl-1,2,3,4-tetrahydroisoquinoline(1BnTIQ)は、脳内在性であり、パーキンソン病患者脳脊髄液中で増加傾向が認められている。更に、1BnTIQを実験動物に投与するとパーキンソニズムを引き起こすことが明らかにされているが、その作用機構は不明である。そこで毒性発現機構を明らかにする目的で、ヒト由来の株化細胞であるSH-SY5Y細胞を用いて1BnTIQによる発現変動遺伝子を解析し、細胞死への関与の検討を行った。0.5mM,1BnTIQ 5h処置後メディウムから1BnTIQを除去しても引き続き細胞死が認められたところから、この条件で細胞を死に誘導する変化が起きている事が考えられた。そこでディファレンシャルディスプレイ法やcDNAマイクロアレイを用いて発現変動遺伝子を検討したところ、NMDA受容体、アポトーシス関連遺伝子をはじめ、数多くの発現変動遺伝子が認められた。更にNMDAアンタゴニストであるMK-801によって1BnTIQ毒性が軽減されたところから、1BhTIQ毒性におけるNMDA受容体の関与が強く示唆された。 以上、脳内在性神経毒1BnTIQ毒性発現にNMDA受容体が関与し、細胞死にアポトーシスが関与していることを明らかにした。このことは1BnTIQ毒性発現機構およびパーキンソン病発症原因を明らかにする手がかりになると考えられる。
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