開口分泌素過程の分子機構とその制御機構に関する研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12480232
• 研究機関: 上智大学
• 研究代表者: 熊倉 鴻之助 上智大学, 理工学部, 教授 (70129790)
• 研究分担者: 今泉 美佳 杏林大学, 医学部, 助手 (40201941) ; 前川 昌平 神戸大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (40173695) ; 笹川 展幸 上智大学, 理工学部, 助教授 (20187107)
• キーワード: クロマフィン細胞 / 開口分泌 / カーボンファイバー / 顆粒運動 / PKC / イノシトール-6-リン酸 / アクチン-ミオシン相互作用 / アクチン細胞骨格

研究概要

1)微小炭素繊維電極アンペロメトリー法により、1個のクロマフィン細胞からの開口分泌頻度に対するPKC活性化の影響を調べた。高カリウムによる5分間持続刺激に対する開口分泌応答では、開口頻度が有意に増加し、特に刺激開始後2・5分における頻度の増加が顕著であったことから、PKC活性化が分泌顆粒供給を促進していることが示された。また、顆粒を蛍光標識して高カリウム刺激後の運動を実画像解析すると、PKC活性化によって中速(0.03・0.06μm/min)で移動する顆粒の割合が顕著に増加したことから、中速での顆粒運動が供給に関わり、PKCの調節下にあることが示唆された。
2)アクチン-ミオシン系が関わると考えられる分泌顆粒の運動について、可視的測定解析を進めた結果、高カリウム刺激後2・10分間の顆粒の運動は、無刺激細胞に比較して極めて活発であり、移動距離にして無刺激細胞の6倍移動していることが明らかになった。また、無刺激下においても低頻度の自発性開口像が観察された。
3)副腎クロム親和細胞由来の分泌顆粒画分よりラフトを調製し、主要成分のタンパク質を固定し、これらがH+- ATPase complexであることを見い出した。また、脳由来シナプス小胞膜ラフトにおいてもこのcomplexが存在することを見い出した。すなわち分泌顆粒の成熟にラフトが大きく関与することが見い出された。
細胞骨格と分泌過程・メンブレンサイクリングとの関わりを解析する目的で、脳由来ラフトに存在するチューブリン結合因子を解析し、SCG10と呼ばれるチューブリン結合因子の局在を見い出した。アクチン系の解析においては、低分子量Gタンパクのうち、Rac1が神経細胞ラフトに局在することを見い出した。

研究成果

• [文献書誌] Konosuke Kumakura: "Multiple roles of actin cytoskeleton in catecholamine release from chromaffin cell"In : Proceeding of the 9th international Catecholamine Symposium. (in press).
• [文献書誌] Konosuke Kumakura: "Roles of actin filaments and actin-myosin interaction in the regulation of exocytosis in chromaffin cells"In : The chromaffin cell : transmitter biosynthesis, storage, release, actions, and informatics. (in press).
• [文献書誌] Maekawa, S.: "Localization of neuronal growth-assiciated microtubule-destabilizing factor SCG10 in brain-derived raft membrane microdomains"J.Biochem.. 129. 691-697 (2001)
• [文献書誌] Orito, A.: "Calcium-dependent association of annexin VI, protein kinase C α and neurocalcin α on the raft fraction derived from the synaptic plasma membrane of rat brain"J.Neurosci. Res.. 64. 235-241 (2001)
• [文献書誌] Kumanogoh, H.: "Biochemical and morphological analysis on the localization of Rac1 in neurons"Neurosci. Res.. 39. 189-196 (2001)