小脳のシナプス可塑性は運動学習の基盤と考えられており、平行線維・プルキンエ細胞間のグルタミン酸作動性興奮性シナプスで起る長期抑圧、抑制性介在神経細胞・プルキンエ細胞間のGABA作動性抑制性シオプスで起る脱分極依存性増強等が知られている。本研究では、これらのシナプス可塑性維持の分子機構を明らかにすることをめざしている。シナプス伝達のユニット反応であるmEPSCの大きさを長期抑圧時に計測する実験により、長期抑圧には約2日間持続しmRNA・蛋白質合成に依存する後期相が存在することが明らかになっていたが、平成12年度は長期抑圧後期相の維持にカルモヂュリン依存性の脱リン酸化酵素であるカルシニューリンが関与することを明らかにした。平成13年度は、カルシニューリンがどのように長期抑圧後期相の維持にかかわるかを検討した。小脳の培養系において、長期抑圧後期相を引き起こす5分間以上の高カリウム液刺激により、スーパーオキサイドが発生してそれがカルシニューリン活性を抑えることにより、長期抑圧後期相を引き起こしていることを示した。また、私たちは抑制性介在神経細胞・プルキンエ細胞間のGABA作動性抑制性シナプスにおける脱分極依存性増強についても、どのくらいの時間可塑的変化が持続するかを、培養プルキシエ細胞でのmIPSCの大きさの測定により調べ、脱分極依存性増強が一日以上持続することを平成12年度に示した。平成13年度は、GABA作動性抑制性シナプスで起こる脱分極依存性増強についても、mRNA合成に依在する後期相が存在することを明らかにした。
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