研究課題/領域番号 |
12480241
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研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
重本 隆一 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 教授 (20221294)
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研究分担者 |
伊佐 正 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 教授 (20212805)
木下 彩栄 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (80321610)
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キーワード | グルタミン酸受容体 / 小脳 / mGluR1 / 阻害抗体 / 淡蒼球 / 運動学習 |
研究概要 |
われわれは、傍腫瘍性小脳失調症をきたしたHodgkin病の2症例から代謝調節型グルタミン酸受容体(mGluR1)に反応する自己抗体を発見した。この自己抗体はmGluR1を機能的に阻害し、マウス脳に注入すると一過性の小脳失調を再現できる。mGluR1自己抗体はプルキンエ細胞に作用させると、ゆっくりとした外向き電流を生じ、興奮性を抑制した。ヒトの症例においては、小脳失調の他に運動学習障害や短期記憶の障害が認められているが、この抗体を動物に適応することによってmGluR1の機能阻害がどのような症状を引き起こしうるかを検討した。まず、マウスの小脳片葉に持続的に注入したところ、前庭動眼反射の順応が抑制され、運動学習が阻害されていることが確認された。また恐怖条件付けによる心拍徐脈反射の亢進が認められ、この異常はmGluR1ノックアウトマウスでも確認された。さらに、小脳以外におけるmGluR1の機能を調べるためサルを用いてmGluR1機能阻害抗体を淡蒼球に注入する実験を行った。淡蒼球外節・内節の単一ニューロンから細胞外記録活動を行った結果、淡蒼球外節・内節ニューロンの発火頻度はグループlmGluRsのアゴニストであるDHPG投与により著明に増加し、一方、アンタゴニストのADAあるいはLY367385投与により減少した。さらに、mGluR1阻害抗体の微量注入によっても、細胞の発火頻度は上昇した。以上の結果は、mGluR1がグルタミン酸により活性化されることによって淡蒼球ニューロンの活動性を上昇させていることを示している。また、ブロッキング抗体はアンタゴニストとしての作用とは異なる何らかのメカニズムによりこれらの細胞を興奮させる作用を持つことを示しており、今後そのメカニズムについて検討する予定である。
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