研究課題/領域番号 |
12480245
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
工藤 典雄 筑波大学, 基礎医学系, 教授 (60014239)
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研究分担者 |
西丸 広史 筑波大学, 基礎医学系, 助手 (20302408)
尾崎 繁 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (60292546)
山本 三幸 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (80143147)
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キーワード | 脊髄 / マウス / 歩行運動 / GABA / グリシン / セロトニン / リズム形成回路 / 発達 |
研究概要 |
本研究ではマウス胎児の脊髄摘出標本を用いて、セロトニンによって腰髄前根に誘発される歩行様リズム活動についてその日齢に伴う変化を調べた。胎生13日のマウスの脊髄摘出標本において、セロトニンの灌流投与により、左右の腰髄前根間において同期したリズムが観察された。このリズムはキヌレン酸投与によっては消失せず、ストリキニーネ及びビククリンによって抑制された。このことからこの時期のマウス脊髄においてはグルタミン酸受容体ではなく、グリシンおよびGABA_A受容体による興奮性シナプス伝達がこれらのリズム活動を駆動していることが考えられた。さらにこの時期の腰髄運動ニューロンをカルシウム感受性色素(カルシウム・グリーン)で逆行性に染色し、そのリズム活動の際の細胞内カルシウム動態を観察したところ、リズム活動に一致した細胞内カルシウム濃度の振動が観察された。細胞内カルシウム濃度の変化はニューロンの軸索や樹状突起の伸長、シナプスの発達などに重要な役割を担っていることから、この時期のグリシンおよびGABA_A受容体による興奮性の作用は神経回路網の発達に重要な役割を担っていることが示唆された。また、同標本において脊髄の前交連を切断したところ、リズム活動は見られたものの左右前根では同期しなくなった。このことから、左右の脊髄において両側に独立したリズム形成回路網が存在し、左右の神経回路網は前交連を通る軸索によって結合されていることが示唆された。セロトニンによって誘発されるリズム活動のパタンは胎生17日までに左右交代となり、リズム活動も生後のマウスと同じように、グルタミン酸受容体の拮抗薬であるキヌレン酸によって抑制されることから、歩行リズムを形成する基本的な神経回路はマウスにおいては胎生期にできることが示唆された。
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