今年度は研究代表者の転任に伴い、研究室の立ち上げと並行して研究を進めることになった。このため研究の進行が若干遅れており、また順序を一部入れ替えて研究を開始しているが、これらは本研究の内容に影響を与えることではなく、来年度も引き続き当初の計画に通りに研究を進めていく予定である。 今年度の研究成果は以下のように要約される。まず麻酔下に健常ラットのインスリン機能特性を、インスリンクランプ法(インスリン溶液を外部から定速注入して高インスリン血漿状態を作成し、この状況下で血糖値を標準値に保つよう糖溶液を同時可変注入して、定常状態での血漿インスリンレベルと糖注入速度を指標として表した糖代謝機能測定・評価法)を用いて求めた。62頭の11週齢オスラットを用い、手術手技の確認とインスリンクランプ法の習熟も同時に目指しながら実験を行った結果、これまでに28頭でデータが得られ、その結果から(1)インスリン感受性など、今後の研究の対照値となる糖代謝基本特性を得た。またこの際、(2)インスリンクランプ開始時にはインスリン溶液を先行注入することによって、動物の代謝機能がより安定しやすいことを証明した。次にII型糖尿病(高脂肪体質などによるインスリン機能不全)を意識して、(3)独自に調合した高脂肪食を3〜11週齢まで投与することにより糖尿病モデルラットの作成を試みた。この結果、この群(18頭)では血糖値が標準食健常群よりも有意に上昇しており、軽度糖尿病モデルが作成できたものと考えられた。そこでこの群についても(4)インスリン機能特性を健常群と同様に測定し、これまでに9頭でデータを得た。この数はまだ十分ではないが、その特性を健常群のそれと比較したところ、(5)糖尿病モデル群ではインスリン有効量(ED_<50>)が高値であることが示唆された。
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