研究概要 |
1.せん断応力を受ける内皮細胞内アクチンフィラメントのダイナミックスと細胞機能 GFP-アクチン融合ベクターの導入と,実時間共焦点レーザ顕微鏡と高感度・高解像度デジタルCCDカメラの組み合わせにより解像度の高い映像を得,流れの負荷条件の下における培養内皮細胞内のアクチンフィラメントの動きを観察した.流れの負荷条件としては,通常の大動脈にかかる平均的せん断応力である2Paを約6時間にわたって負荷した.当初ランダムに配向していたアクチンフィラメントがせん断応力負荷と共に一部が消失する場合,あるいは一部が平行移動する場合などが観察され,最終的には流れの方向に配向した.このような現象が観察された細胞はまだ数が少ないので,今後さらに実験を増やして詳細な観察と解析を行う予定である. 2.せん断応力を受ける内皮細胞内の応力分布の有限要素法解析 実験的には培養内皮細胞を用いて流れ負荷実験を行い,かつその後の内皮細胞形状と力学特性を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて計測した.AFMの計測で得られた形状をもとにして,フローチャンバ内の流れの状態および流れが内皮細胞に及ぼす力,さらには細胞内に発生する応力分布を有限要素法により計算した.内皮細胞の内部のモデルとしては,アクチンフィラメントの細胞骨格構造をビームで模擬したもの,あるいは均質材料としてモデル化し,3次元の変形状態や応力状態を求めた.細胞はせん断応力の負荷と共に形態を変化させ,実験で得られる結果と類似であった.しかしながら,現在の解析のアルゴリズムは細胞内の応力値がある一定値をとる,あるいはp流れに対する細胞の抵抗を下げて一定値をとるといったもので,実際の細胞のメカノセンサを考慮したものになっていない.今後はこの点を考慮に入れたアルゴリズムの構築を目指す予定である.
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