乳ガンなどの悪性腫瘍の治療において、近年センチネルリンパ節生検という診断法が導入されている。センチネルリンパ節とはがん細胞が最初に流れ込み転移を起こすリンパ節の意味で、乳がん手術の際に数個のセンチネルリンパ節のみを切開、摘出し、これを詳細に検索した上で、転移がなければそれ以上のリンパ切除を省略する方法である。これにより、術後の疼痛、しびれ、リンパ浮腫から開放される。手術時に色素とRI(放射性元素)コロイドの両方を腫瘍近傍に注入し、肉眼で色素を確認するとともに、ガンマカウンタで放射線を計測してリンパ節を同定する方法が主流であるが、日本では管理区域外でのRI使用が規制され、RIを含んだ摘出物の扱いに関する法律が未整備であることや、外科医、看護婦、病理医などのスタッフにとって被爆が大きな間題となる。従って、非RI法によるリンパ節同定法の開発が望まれている。我々は生体内にRIコロイドの代わりに磁性微粒子を注入し、リンパ節に流れ込んだ微量の磁性微粒子を検出するためのHTS-SQUID磁気センサ診断システムの開発を行った。 今年度は動物実験を行うと共に、従来のSQUIDセンサから差分型(グラジオメータ)SQUIDを試作した。グラジオメータの採用によって環境磁界の影響を受けにくくなりより、より現実的なものとした。動物実験で者マグネタイト(Fe_3O_4)分散液を麻酔したラットの両脚に注射し、リンパ節を摘出、取り出した、リンパ節を開発したSQUID磁気計測システムで計測した。グラジオメータの測定結果ではセンサ部を約50cm移動させても磁束ロックがはずれることなく動作させることが出きることを確認した。
|