研究課題
基盤研究(B)
全身の動脈内の血液成分、血圧は、どの動脈においても大差がないにもかかわらず、病理学的研究により動脈硬化は血管湾局部と分岐部に局在化することが明らかにされていて、分岐部において局所的に顕著な差異の存在する血流が動脈硬化の発症・進展の局在化を規定する重要な因子として注目されている。動脈硬化病変の初期過程として単球が血管内皮下に進入してマクロファージとなり変成低比重リポタンパクを呑食して泡沫細胞となりその部分に蓄積して動脈硬化病変を形成する過程が想定されているが、単球と内皮細胞の相互作用特に力学的相互作用に関する知見は極めて少ない。本研究では、単球が付着することにより内皮細胞の動きと粘弾性がいかに変化するかを解析した。また、内皮細胞の内部構造の変化を解析し、内皮細胞のマイクロメカニクスに変化をきたす物質的基盤を明らかにした。さらに、単球が内皮下へ進入する動態を立体的経時的に観察した。単球の付着により、以下のマイクロメカニクスの変化が観察された。まず、単球の内皮細胞への付着により内皮細胞と基質間の距離がナノメータオーダで増大するが内皮細胞間の間隙には有意の変化が発生しなかった。次に、単球の付着により内皮細胞の弾性の低下すなわち柔らかくなることが明らかとなった。内皮細胞の内部構造を調べると、ストレスファイバーの減少とFAKの減少が観察された。単球は付着直後から内皮下への移動を開始し、30分以降はあまり動きがなくなった。以上の結果は、単球の付着により内皮細胞は単球が内皮細胞の裏側に進入するのを許容する状態になり、単球の進入を手助けし、単球は速やかに内皮下へ移動すると考えられる。
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