研究課題/領域番号 |
12490006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
兵頭 俊夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90012484)
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研究分担者 |
斉藤 晴雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (60235059)
長嶋 泰之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (60198322)
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キーワード | 陽電子消滅 / 陽電子ビーム / 陽電子減速材 / タングステンメッシュ / 陽電子消滅誘起特性X線 / 特性X線 / 薄膜 |
研究概要 |
まずはじめに、手持ちの低速陽電子ビーム発生装置の整備を行った。陽電子減速材としてタングステンメッシュを用いることにより、6.4×10^<-4>という高い変換効率を実現した。この値は、減速材としてしばしば用いられるタングステン単結晶の値を凌ぐものである。最も高い変換効率が得られる希ガス固体には及ばないが、安定性や取り扱いの容易さの点では、タングステンメッシュの方が優れている。 こうして得られた陽電子ビームを試料に入射し、Si-PIN方式のX線検出器を用いて、試料表面から放出されるX線の測定を行った。試料には、チタン、金、Cl^-イオンを電着したカーボンなどを用いた。 Cl^-イオンを電着したカーボンを試料として用いた場合に、Clにおける陽電子消滅誘起特性X線と思われる信号が検出された。ただし、その計数率は極めて低い。また、連続的なバックグラウンドノイズに埋もれているために、S/Nが極めて悪い。このノイズは、陽電子の対消滅によって生じたγ線が検出器結晶内でコンプトン散乱を起すことによって発生したものと考えられる。そこで、S/Nを向上させるために、γ線検出器を用いた同時計数法について検討を行っている。 陽電子消滅誘起X線の計数率を向上させるためには、X線検出器の有効面積を大きくする必要がある。しかも、上記のバックグラウンドノイズを増やさないようにするためには、検出器の結晶を薄くする必要がある。このような条件を満たすSi(Li)X線検出器を購入した。 また、試料にチタンや金を用いた測定の結果から、対消滅によるγ線か内殻電子を励起してX線を発生させるため、陽電子消滅誘起特性X線が検出しにくくなることがわかった。これを避けるためには、試料として薄膜を用いる必要がある。このような試料について、現在検討中である。
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