研究課題/領域番号 |
12490009
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
広領域
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木暮 一啓 東京大学, 海洋研究所, 教授 (10161895)
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研究分担者 |
山本 啓之 海洋科学技術センター, 研究主幹 (30182645)
千浦 博 国際基督教大学, 教養学部, 準教授 (00103698)
水之江 義充 九州大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (20157514)
石浜 明 国立遺伝学研究所, 名誉教授 (80019869)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2002
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キーワード | VNC / 細菌 / 生理状態 / 分子レベル / 微生物生態 / 定常期 / 培養能 / シグマ因子 |
研究概要 |
細菌学が確立したのは、19世紀の後半で、寒天平板培地を用いた培養と細菌の単離技術の確立と時を同じくする。この技術は、寒天平板培地上にコロニーを作らせることによって個々の細胞レベルでは目に見えない細菌の存在を可視化すること、さらにそれらの計数することを可能にした。この技術が細菌学の基本となったため、細菌学者は寒天平板培地を細菌の有無の判定にも用いるようになった。つまり寒天平板培地にコロニーを作らなければ、その試料の中には細菌はいないか、死滅した、と判断する。この考え方は、医学、衛生学、食品細菌学などを含む実質的にほぼ全ての細菌学の分野の常識となっていた。 こうした常識と違う常識を持っていたのは、生態学の分野である。天然の土壌や水の中の細菌を対象にしてきた研究者は、1950年代から既に天然の細菌の大部分は培養できないことに気が付いていた。すなわち、天然環境中で生きて増殖していることと、培養できることは同義ではないのである。 これらの二つの常識を繋いだのが、VNC (Viable but Nonculturable)つまり、培養できないものの生きている細菌の存在についての概念である。この概念は1985年にアメリカメリーランド大学のRita R.Colwell教授によって提案され、その後多くの研究が始まった。しかしこの概念は今だに分子レベルできちんと記述されたとは言い難く、それが多くの疑念を抱かせることになっている。 本研究はVNCとはどのような生理状態であるかについて、分子レベルでその解明を目指したものである。この研究を通じ、以下のことを明らかにした。(1)混菌状態から、VNC状態の菌を選択的に分取する方法論を作った。(2)VNC状態と酸素ストレスとの関係を明らかにした。(3)天然の共生状態の菌のVNC状態について知見を得た。(4)細菌の死滅あるいはVNC状態を誘導する要素としてのウイルス様粒子の動態を明らかにした。(5)大腸菌のシグマ因子と定常期の細胞の生理状態との関わりについて明らかにした。
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